景気対策の目玉として打ち出した総額2兆円(上限)の生活支援定額給付金について考えてみようと思います。
麻生首相は当初、高所得者に有利な定率減税を目論んでいましたが、公明党から中低所得者に効果が及ぶ定額減税を要請されたため、自民党は単発の給付方式を提案し、公明党は給付方式でも中低所得者に手厚く配慮されると了承したとされています。
給付金制度の現在の骨子を整理すると、
1 一律12,000円を支給する(65歳以上と18歳以下には8,000円を加算して計20,000円)。
2 迅速、公平に支給する(年度内に)。
3 高額所得者には自発的な受け取り辞退を促す方式とする(法律で所得制限は行わない)。
4 財源は特別会計の剰余金とする(流用の法改正は行わない)。
5 3年後に消費税引き上げる(景気回復などが前提に)。
6 日本に永住する外国人も含める(1999年の地域振興券と同じ)。
減税方式とした場合、所得税減税は早ければ来年2月から始まりますが、住民税減税は住民税額が確定する来年6月以降の実施となり、減税効果が間延びしかねないと考えられます。給付方式とした場合、総額を一括して交付できることから、減税方式に比べスピーディーに景気刺激効果が見込まれるといわれています。
一方、次のような批判(問題点)も挙げられています。
1 消費増による名目GDPを押し上げる効果は0.1%にとどまる(内閣府試算)。
2 財源とする特別会計剰余金5%以上の使途変更が必要(法改正すべきなのに無視)。
また、麻生首相の詭弁とも思える発言には次のようなものがあります。
1 法律で所得制限をやると手間暇がかかる。
2 市町村の窓口で自発的に辞退をしてもらうのが簡単だ。
3 別に必要ないオレはいらないと給付金を取りにいかない人がいるならそれはそれで結構だ。
民主党党首は「単に2兆円をばらまく選挙前の場当たり的な思い付きだ。そんなものをメーンにして経済対策をやっても、日本経済そのものの立て直しにはならない。」としています。
検討経過を検証すると、実質的な財政出動を要する政策はおよそ5兆円といわれていますが、その大きな割合を占める給付金は2兆円となっており、本当に景気浮揚策の柱として政策の実行効果があるのか疑問が残りそうです。
特に法改正を行わずに特別会計の剰余金(いわゆる埋蔵金)を充てること、所得制限を設けずに高額所得者の受け取り辞退を促すことは国民の理解を得るのは難しいような気がします。
しかし、近い将来、消費税の見直しが必要なこと自体は、どうして必要か何に使うかなどを明示していけば理解を得られると考えられます。
残念ながら、国民の信を得ていない首相が政局より政策が大切だと解散総選挙を回避するために着手した追加経済対策で迷走し、国民新党がいう「解散総選挙を控えて税金を使った大がかりな選挙買収事件」といわれても仕方がないように思えてきました。
政府は、中央省庁から横断的に10人以上のスタッフを集めて専従組織を立ち上げるとのことですが、あまりにもおそまつな政策提案に政権担当能力を疑われかねないと思いました。
昨日、自民党幹事長は「24時間以内に決着する」とし、多くの人が気軽に発言するのが混乱の原因と話していました。誰がどうやって原案を検討しているのかオープンにし、十分議論を尽くしてほしいものです。
総選挙に関する連続世論調査(11/8~9、朝日新聞、第4回、電話)
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