軽躁状態で早朝5時から働き続けた末、突然発症した右顔面神経麻痺。
眉毛が段違いになっていることに気づき、外来受診した当日、そのまま入院に。
その時に学んだ病気のことや治療経過の備忘録。
顔面神経麻痺とは
顔面麻痺は、脳から出される顔の筋肉を動かす命令を伝える神経です。この顔面神経が何らかの原因で顔の筋肉を動かす命令を伝えられなくなると、顔の左右どちらか半分が動かなくなります。その結果、顔半分が垂れ下がったようになり、目、口が閉じづらくなります。
どんな病気か
ほとんどは、顔面神経のウイルス感染が原因といわれています。ウイルス感染によって神経が傷ついて、うまく命令を伝えられなくなった状態です。軽症の場合、無治療でも70%以上が完全に治ります。麻痺が強い場合、すなわち神経の傷が大きい場合は、なにがしか後遺症を残す可能性があります。
一般的には、顔面麻痺の程度は一週間ほどかけて悪化するように感じます。その後、2~4週間頃から少しずつ回復傾向がみられます。
治療はどうするの
顔面神経の障害は、2~4週間、特に2週間が最も強く、この時期の治療が回復を左右します。麻痺に気づいたら、なるべく早い時期から治療を始めて、神経の障害をなるべく少なくしてやることが最も大切なことです。治療の開始が遅れると、神経の傷が十分回復しないことがあるため、麻痺を残す可能性があります。
疲れたり、体が弱ったときにかかる病気なので、2週間位は十分な休養をとります。
痛んでいる神経を守り、回復を促すために、少なくとも2週間は毎日、血の巡りをよくする点滴、内服薬、神経ブロックなどを行います。
筋肉を動かさないでいると、筋肉が堅くなってますます動きにくくなります。予防のために、マッサージによる動かす訓練と顔の筋肉への電気刺激を行います。
安静入院治療ができれば、その方がいいでしょう。 一般的にステロイドの点滴治療を行います。また星状神経節ブロックも行います。 瞼が閉じられないので、角膜が傷まないように点眼を頻回に行い、寝る前には眼軟膏を塗り、絆創膏などで上下の瞼を閉眼状態になるよう貼りつけます。
1週間から10日ほどの安静集中治療を行います。入院治療中に大多数は、徐々に麻痺が回復していきます。 また治療開始が遅れたり不十分な治療などにより、麻痺が治らず陳旧性顔面神経麻痺という状態になってしまっている場合は、前記の顔面神経減圧術あるいは圧排術と云われる手術を施行することもあります。
医療機関によってはこの手術を早期から行うところもあるようですが、一般的には、先ず保存的療法を行うのが普通です。顔面神経減圧術や圧排術などでも麻痺が軽快しない場合は、美容的見地から、あるいは本人の希望などにより形成外科的手術をすすめます。
処方薬(私の場合)
・メチコバール錠500ug(1日3回毎食後)
ビタミンB12です。末梢神経の働きを助けて手足のしびれ、痛み、まひなどの症状を改善します。
・ユベラニコチネート(1日3回毎食後)
抹消の血液の流れをよくしたり、血栓ができるのを防ぐお薬です。
・アデホスコーワ腸溶錠20(1日3回毎食後)
血管を拡げて血液の流れをよくして、心不全、頭部の障害、慢性胃炎、眼精疲労、めまいなどを改善します。
・バルトレックス錠500(1日3回毎食後)
ウイルスによる感染症に用いるお薬です。
・リスミー錠1mg(不眠時)
睡眠薬です。ねつきをよくするお薬です。
・ヒアレイン0.1(随時)
目の傷を治療したり、目の乾燥を防止するお薬です。
・その他 神経ブロック(入院中常時)
副腎皮質ホルモン薬(入院中毎日1回2時間)
大切なこと
帯状疱疹や顔面神経麻痺などの末梢神経の病気は、神経が最も痛んでいる時期である2~4週間、特に2週間以内の治療が大切です。病気に気が付いたら、できるだけ早くから神経を守る治療を始めて、神経の痛みをなるべく少なくしてやることが後遺症を少なくするために重要です。治療が遅れると神経の傷が固定してしまい、治りが非情に悪くなります。最初の治療がとても大切なのです。
症状
顔面神経麻痺が起こると、顔の筋肉が麻痺して顔が曲がった状態になります。
眼を閉じることが困難になったり、水を飲むと口から漏れたりします。通常は顔面の片側のみに生じます。よくみられるベル麻痺、水痘帯状疱疹ウイルスが原因のハント症候群では、これらの麻痺症状はある日突然現れます。また、麻痺が現れる前に麻痺した側の舌がしびれたり、耳周囲の痛みが生じたり、顔がピクピク痙攣(けいれん)したりすることもしばしばみられます。
顔面の麻痺は3-4日間で悪化し、片側の顔面が全く動かなくなることもよくあります。従って、数週間・数ヶ月の経過で徐々に顔面の麻痺が生じた場合は、ベル麻痺・ハント症候群以外の顔面神経麻痺を生じる病気を疑います。
また、顔面神経には味覚を伝える神経、涙や唾液を分泌させる神経、大きな音から内耳を守るため鼓膜を緊張させる反射を起こす神経も含まれています。そのため、顔の麻痺とともに、麻痺した側での味覚の障害、涙の分泌低下、音が響くなどの症状を伴うことがあります。
ハント症候群の場合は、前述のように耳(耳介)や口の中に帯状疱疹が生じ、激烈な痛みを伴い、さらに耳鳴り・難聴・めまいを伴うこともあります。
原因不明のベル麻痺でも、耳周囲の痛みを伴うことはよくあります。
私の場合、右顔面神経麻痺でしたが、「ピキッ」というような音がしてだんだん動かなくなり、同じ音がして回復に向かいました。気のせいかもしれませんが、神経を走る電気が切れたりつながったりしたような感じでした。
いつ頃治るのか
顔面神経麻痺を発症した患者さんがまず最初に知りたいことは、いつ頃・どの程度まで治るのか ということだと思います。重要なことは、末梢性顔面神経麻痺の多くは回復するまでに時間を要し、治療を開始して数日で良くなることは少ないのです。一度障害された神経が障害された部位から徐々に再生するのに時間を要するためです。それぞれの患者さんの麻痺の程度によって、また原因・治療によって回復の過程は大きく異なるのですが、ここで大体の目安について書いておきます。ただし、ここで述べるのはあくまでベル麻痺・ハント症候群についてです。腫瘍や中耳炎・外傷などが原因の場合、あるいは他の合併症がある場合にはあてはまりません。
麻痺の程度:通常、麻痺が発症してから1週間程度は症状が進行することがありますので、麻痺の程度は1週間以上経たないと判定できません。原則として麻痺が重症なほど治るまで時間がかかり、治り方も不十分なことがあります。後遺症も重症なほど残ることが多くなりますがリハビリ(やりすぎは禁物)で、ある程度は予防できます。
重症の場合:動きが正常の20%以下の状態ですが、外見的にもかなり麻痺が目立つ状態です。2-3カ月で麻痺が改善する患者さんのグループ(神経障害が軽度)と3-6カ月くらいでようやく麻痺が改善し、さらに程度は様々ですが後遺症が生じる患者さんのグループ(神経障害が高度)に大きく分かれます。このように同じ重症でも神経の障害の程度によって回復過程異なります。発症してから1~2週間後に電気生理学的検査を行うと、回復の過程を推定することができます(「麻痺の検査」をお読みください)。
軽度~中等度の場合:顔の動きが正常の半分以上の場合が軽度(安静にしていればあまり目立たない)、20%~50%程度の場合が中等度になります。軽度の場合は1~2カ月以内、中等度の場合は2~3カ月程度で完全に治ることが多く、後遺症の心配もあまりありません。
私の場合、顔がゆがみ始めてから割りと早く受診したので、2週間の入院と自宅療養 10日間でした。入院して1週間はますます顔がゆがんでいったのですが、「ピキッ」という神経に電気が走るような感じがしてから少しずつ顔が動くようになりました。
顔面マッサージ
顔面マッサージの仕方(がんばってね)
※ゆっくり40分位かけて行いましょう(1日2回は行いましょう)
1 麻痺側の額を指で輪状マッサージ(数回)
2 額からこめかみへ向けて指で輪状マッサージ(数回)
3 こめかみを指で輪状マッサージし軽く圧迫する(数回)
4 眉の上を輪状マッサージ(数回)
5 眼の下を輪状マッサージ(数回)
6 鼻の側面をを輪状マッサージ(数回)
7 ほほ骨にそって耳たぶのところまで輪状マッサージ(数回)
8 口の上としたを交互に輪状マッサージ(数回)
9 あごから耳たぶに向けて輪状マッサージ(数回)
10 あごから耳たぶに向けて軽く打ってマッサージ(数回)
11 ほほをつまむ(数回)
12 眼を力一杯開く、固くつむる(数回)
13 口笛を吹く♪
14 「イー」といいながら唇を左右に開き歯をみせる(数回)
15 大口(ライオンフェース)をあける(数回)
16 歯をくいしばる(2秒ずつ2~3回)
17 驚いた顔、怒った顔(しわを寄せる、数回)
18 ふうせんをふくらませるようにして次は笑う(ニコニコフェース、数回)
やってはいけないこと
末梢性顔面神経麻痺という病名でも、神経の障害が軽度の患者さんはリハビリをしなくても良くなります。神経の障害が高度の患者さんでは、回復の過程で 後遺症が少なからず生じます。神経の障害の程度(軽度か、高度か?)は、麻痺が生じてから 1週間以降に電気生理学的検査を行うと判定することができます。
神経の障害が高度な患者さんの場合、絶対にやってはいけないことですが、電気刺激・低周波などで無理に動かすこと、顔に力を入れて動かす訓練をやりすぎることです。実はリハビリ科のある大きな病院であっても、低周波刺激が顔面神経麻痺の後遺症を起こりやすくすることが知られていない場合もあるのです。病院で勧められても、低周波刺激によるリハビリだけは受けないようにしてください。また、自分で顔を動かす訓練も強くやりすぎるとよくありません。目をつぶる動きをするときは頬や口の周りが動かない程度に軽く動かすこと、食事の時や話す時など口を動かすときは目をなるべく閉じないように・見開くような感じの方がよいと思われます。
もう一つは受診せずにしばらく様子をみて、悪くなってから受診することです。顔面神経麻痺は早期診断・早期治療が大原則ですので、早期受診をお願いします。特に水疱瘡のウイルスで起こるハント症候群の場合は発症後3-4日以内に抗ウイルス剤を投与するのが最善の治療法ですので、耳やその周囲に痛みを伴う水疱(みずぶくれ)や痂皮(かさぶた)が生じている患者さんでは1日でも早く耳鼻咽喉科を受診してください。
私の場合、県立総合病院を受診したのですが、診療科は麻酔科でした。受診した際、直ちに入院するようにいわれて早期治療が一番だといわれました。それで最短の2週間で退院することができました。
コメントはこちら