これまで少しずつ身につけてきた病気の付き合い方のようなものを思い出しながらこれからも書き足していければと思います。
1 はじめに
2 症状
3 病型
4 治療
5 寛解
6 予後
1 はじめに
双極性障害(躁うつ病)は、治るというイメージは少なく、精神病として偏見にさらされることがあります。
躁状態では、不眠、多弁、買いあさりなど、迷惑行為や逸脱行為を行うことがありますが、本人には病識がありません。うつ状態では、食事や外出もできず、床に伏してうつが過ぎ去るのを待つしかないときもあります。
精神病院で一生を過ごす者、突然病気を発症するサラリーマン、退職に追い込まれる者、障害年金や生活保護で細々と生活を営む者など、さまざまな苦労を抱えることとなり、、人生を左右する病気であることには間違いありません。
しかしながら、病気に対する正しい知識を持ち、薬剤を中心とした適切な治療を続けると、病相の安定を図ることができます。 不用意に治療を中断し、服薬を中止したり、適切な処方の調整がなされないまま服薬を継続すると、病気が再燃したり、病相の繰り返しが早まり、ラピッドサイクラーとなることもあります。
このサイトでは、双極性障害(躁うつ病)に対する正しい知識を理解して、病気とともに暮らす工夫や知恵を探したいと思います。
なお、管理人は医師ではありませんが、このサイトをご覧になり、当てはまると思う方は、一刻も早く病院で受診してくださるようお願いします。
2 症状
双極性障害(躁うつ病)は、初めにうつ病(単極性うつ病)と同じ気分が落ち込むうつ状態を経験することが多いですが、うつ病(単極性うつ病)と異なり躁状態(軽躁状態)を経験します。
双極性障害(躁うつ病)は統合失調症とともに2大精神病といわれることがあり(てんかんも含めると3大精神病といわれます。)、いまなお強い偏見にさらされることがあります。
躁状態(軽躁状態)は本人にとって心地よく病院を受診する必要性を感じないため、病気に気づくのはうつ状態のときが多く、躁状態の経験があることがわからなければうつ病(単極性うつ病)として治療を開始することになります。
うつ病(単極性うつ病)の治療に使用する抗うつ薬を双極性障害(躁うつ病)の治療で使用すると躁転することがあります。
こうした薬物躁転はうつ病(単極性うつ病)患者には起きないことから、双極性障害(躁うつ病)の遺伝的な素因を有しているともいえます。
3 病型
双極性障害(躁うつ病)には、大きく分けて双極1型障害と双極2型障害があります。
双極1型障害と双極2型障害にはうつ病(単極性うつ病)と同じうつ状態が症状として現れます。
双極1型障害は躁状態を経験しますが、双極2型障害は軽躁状態までの経験となります。
一度躁状態を経験すると双極1型障害となり双極2型障害と診断されることはありませんが、双極2型障害は今後躁状態を経験すれば双極1型障害に診断が変更になることがあります。
4 治療
双極性障害(躁うつ病)と診断された場合、気分安定薬(リーマス、デパケン、テグレトール)を中心とした薬物療法を行います。
リーマスやデパケンといった気分安定薬は血中濃度が重要であり、血液検査を行って処方量と血中濃度を調整する必要があります。
特にリーマスは有効濃度と危険濃度の幅が近く注意が必要です。
薬物療法には、気分安定薬のほか、躁状態のときは抗精神病薬で鎮静し、うつ状態のときは躁転に注意しながら抗うつ薬を追加することがあります。
抗うつ薬は効果が出るまで2週間程度かかるので即効性のある抗不安薬を使用することもあります。
抗不安薬は長期間使用すると耐性ができるので、多剤への一時的なつなぎ使用や頓服での使用が有効です。
治療に使用する気分安定薬、抗精神病薬、抗うつ薬、抗不安薬を総称して向精神薬といいます。
5 寛解
双極性障害(躁うつ病)は治るのか、治らないのか。いつまで薬を飲み続けるのだろう。そうした不安がいつもあります。
双極性障害(躁うつ病)は治ります。治るとは躁状態とうつ状態以外の状態を保つことです。この状態を医学的には寛解(かんかい)といいます。
しかし、寛解は治癒や完治ではないので、治療をやめて放置すると遺伝的な問題などから再発の危険性があります。そのため再発予防のための薬を飲み続ける必要があります。
いつまで飲み続けるかは主治医と相談することとなります。双極1型障害で躁とうつを数回繰り返しているときは生涯飲み続けるのが普通といわれています。
例えば、糖尿病は食料が少なかった太古の時代に備えた体の仕組みが現代ではやっかいな病気となりました。双極性障害(躁うつ病)にもよいところがある個性ともいえます。
6 予後
薬を飲まない生活に戻りたい。寛解といっても薬を飲まなくてはいけなければ治ったという感じはしない。そうした思いからするといつまで薬を飲み続けなければならないのか不安になります。
米国エキスパートコンセンサスガイドラインでは、「2回の躁病相、あるいは1回であっても重症の躁病がみられた場合は、維持療法の開始を推奨し、長期あるいは生涯続行する。」としているほか、angst、tsuangn、tohenなどの症例追跡調査などから、双極1型障害については、再発の危険性を回避するための維持治療の必要性が高いと考えられます。
しかしながら、特に双極2型障害については、寛解期の状況に応じて維持療法の期間を主治医と相談してもよいでしょう。個人的には薬の服用中止も全く不可能ではないと考えられます。
維持療法の期間の目安について、精神科医向けの医学書である双極性障害の治療スタンダードでは、「複数回の再発のある症例においては、前回から今回の再発までの期間やこれまでの病相の平均期間を治療目標の1つとすることもある。また、これまでの病相の回数が重ければ重いほど維持療法の期間を長く設定することも考える必要がある。」としています。
一方、新しい気分安定薬としてラモトリギンの臨床試験も進められています。平成20年10月に抗てんかん薬として先行して厚生労働省の承認を得たラモトリギンですが、海外では既に双極2型障害のうつ病相に効果があると高い評価を得ています。
ラモトリギンを使えば抗うつ薬の併用は不要といわれています。こうした新しい薬が承認されれば安定した状態が続くことが期待できますし、維持療法の期間も終えることができるかもしれません。
慢性疾患の高血圧や糖尿病の薬を飲み続るように、双極性障害(躁うつ病)の薬も抵抗なく飲み続けたいものです。
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